2024年10月
「子どもの遊びは生活経験から」
尾形さよ子
先月9月28日にのっぽ保育園の職員で園内研修を行いました。今回のテーマは「子どものあそぶ環境」についてです。保育室の中で子ども達にどんな経験をさせてあげられるのか、じっくりあそび込める環境ってどんな事?職員は保育室の環境設定の事前課題に取り組み、日頃の子ども達のあそぶ様子や生活する様子をイメージしながら皆でディスカッションをしました。その後に実際に保育室の家具を動かして子どもたちがじっくりとあそべる様にレイアウトの変更をしたり、おもちゃの扱いや片付けについても考え合いました。今回の研修は,子ども達がより楽しくあそべるように職員で考え合い、思いをひとつにする事ができ、よい学びの時となりました。
研修の振り返りの中で「子どものあそびは生活体験が基本となっている。生活経験があそびを豊かにし、子どもの心身の発達を促す。」と園長からの講話がありました。話を聞きながら、何気ない日頃の子どもたちのあそんでいる様子を思い浮かべながらまさにその通りであると感じました。
ある日のままごとコーナーでの事、キッチンの前に立ちAちゃんはお皿洗いの真っ最中。スポンジを使って食器洗剤も時々つけながら、お皿の裏から淵、内側までとても上手に洗います。「Aちゃん、じょうずだね。」と声をかけると「ふふーん」と嬉しそうに次から次へとお皿を片付けて行きます。そのうちに今度はまな板の上で野菜や果物を包丁で切り出しました。そのまな板を鍋の上に持ってきて器用に傾け、切った野菜を包丁で鍋に滑り落とします。まるでその仕草は大人の様子そのもの。そしてお玉でグルグルかき混ぜて料理を作るのでした。その手際の良さはお見事です。
またある時、皆で粘土あそびを楽しんでいる時の事、小さくちぎって丸めた粘土を平に並べ、「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。」とお店屋さんが始まりました。私の顔を見ながらにっこり「いらっしゃいませ。」とAちゃん。「おいしそうですね。これは何ですか?お煎餅、それともクッキー?」何か食べ物なのかな、と安易に勝手に想像をしていた私。それに対してAちゃんからの返事は「違いますよ、お煎餅じゃないです。これはネイルです。」「ネイル?!」とびっくりしつつ「それじゃあ、ひとつ下さい。」と一つ頂く事にしました。すると気前のよいAちゃん、「はい、わかりました。」と私の左手を取り親指と人差し指に黄色い粘土のネイルチップを綺麗に付けてくれ、最後に「かわいいですよ。」とお褒めの言葉もかけてくれたのでした。
この日中の様子をお迎えにきたお母さんにお伝えすると、ご家庭でお母さんと一緒に食後の片付けのお手伝いで皿洗いをしてくれているとの事、また今はお洒落な事やお化粧に興味いっぱいでおもちゃの化粧道具であそんで楽しんでいるとの事。きっとお家の方と会話のやり取りを楽しみながらお母さんがお化粧している様子をよく見ているのだろうな、とその場面が想像できました。
日々の子ども達の様子を観察していると、まさに生活経験が遊びです。子どもを巻き込んだ日々の生活経験が遊びを豊かにしていることを改めて感じます。さぁ、明日は何してあそぼうかな。子ども達が魅力に感じてくれるような言動をしなくてはと少し気持ちが引き締まる思いです。
